2019年頃に、とある大手メーカーのディーラーの方から「新車のSUV人気はあと1~2年で終わる」と言われ、確かにそのくらいで終わるのかもしれないなと思っていました。そのくらい「なぜ作るのか」が分からないほどに多くのSUVが発売され、「なぜ売れるのか」も分からないままに皆が買っていた、熱病のような時期だったように思い返されます。
その後のコロナ禍により、人々の消費が一旦冷え込みましたが、車の需要はむしろ高まっていき、あれから2年が経った今も、SUV人気に翳りは全くありません。しかし、この期間に、SUV人気の中である変化が起こっていったように感じられました。そしてそれと同時に、典型的なSUVといえるデザインの車が少しずつ数を減らしていっているように思われます。
管理人は以前からSUVクーペはセダンの進化における過渡期の形態である、と主張していますが、2021年から2022年にかけて発売されるSUVに共通する変化は、以下のようなものになります。
- 車格カーストから逸脱するためのSUVだったものが、既にカーストの上位に位置し始めている
(筆者の私感では、クーペ>SUVクーペ>SUV>ステーションワゴン=セダン>コンパクトの順番に思えます。クーペが最上位なのは、スーパーカーやラグジュアリーカーと呼ばれる別格の車達も内包している為であり、それらを故意に除外するのであれば、SUVクーペがほぼ同位か、最上位となるかもしれません。) - 都市型SUVと言われる、登坂能力などが皆無なモデルにネガティブなイメージを持たれなくなった。同時にフルタイムAWDが基本となったSUVも減っていき、FFや電動化と合わせた疑似的なAWDが多くなってきている
- 後席のヘッドクリアランスやニークリアランスを犠牲にしても、リアハッチに傾斜のあるSUVクーペスタイルがSUV人気の本流となりつつある
- 最低地上高が同型のセダンモデルと変わらないか、むしろ車高を上げずに縦のボリュームを増すために低くされているものすら出てきている。セダンモデル等との差は、大径タイヤを履いている点のみという場合も
まるで往年のセダンにおけるラフスケッチ段階のコンセプトカーに近づけたような、大径タイヤを履いたクーペという姿が、現在のSUVの理想形なのかもしれません。最低地上高がセダンと同じであり、電動化によりバッテリーが車体の下部に配置された低重心となれば、SUVが避けられなかった乗り心地の問題も、もはや気にするところでは無くなっていると言えます。
ただ同時に見落とせないのが、従来では社用車のイメージが強かったステーションワゴンの人気も上がりつつある事です。これもセダンの進化の過程の1パターンと考えるのであるならば、メルセデスやBMWが展開している完全にクーペルックなクーペSUVまで行くとやや行き過ぎとなり、ステーションワゴンのようにある程度丸みを持ったリアのフォルムがSUVの究極形なのかもしれません。現状それに最も近いのは、シトロエンのC5Xで、この見慣れないデザインの車は、もしかしたら未来の最もポピュラーな車の形と言えるのかもしれません。
そして、クーペルックを深化させていく次期クラウンにクロスオーバーがあるという噂も、今後の流行を思い描くに、あながち噂話では終わらないのかもしれないと思わされます。